新聞記事:おおいそ学園問題 罰則的指導廃止へ   朝日新聞 2009年11月21日

児童自立支援施設「県立おおいそ学園」(大磯町生沢)の職員が、入所する複数の少年に暴行していた疑いがある問題で、県は20日、再発防止に向けた改善計画を県議会・厚生常任委員会で報告した。「寮指導」と呼ばれる罰則的な指導を廃止する一方、暴力については「あったかなかったか特定できなかった」と、不透明さが残る内容となった。


(波戸健一)


 この問題は4月、職員が虐待しているという県への通告で発覚。県の調査に複数の少年や職員が「暴力があった」と証言した。長時間の床のカラぶきや、正座を強要していた寮指導も「強圧的で不適切」と問題となった。


 改善計画は、これまでの学園の閉鎖性や、職員の知識、連携の不足を指摘。その上で▽従来の寮指導を廃止する▽寮に意見箱を設けて、児童が訴えられる仕組みにする▽外部委員と児童が面接し、学園に第三者の目を入れる、などを挙げた。


 一方、暴力については委員から「知事が陳謝しているのに、調査が徹底されていない」という意見が出た。県は「不適切な指導はあったが、最終的に暴力はグレー。今後は職員の処分の検討になる」とし、今後の再調査は否定した。


 児童自立支援施設をめぐっては今月、栃木県の「国立きぬ川学院」で男性寮長が10代の女子入所者に虐待したとして、停職3カ月の懲戒処分を受けている。


 ◆「首絞められた」 脱走の少年


 寮の職員から暴力を受けたとして5月に同学園を抜け出した少年(16)が朝日新聞の取材に応じた。少年は「心当たりのある職員の人には謝ってほしい」と話す。一方で、暴力や嫌がらせがなくなれば学園に戻りたいという心境も明かした。


 少年によると、学園を脱走したのは5月1日の夕方。同じ寮の2人と学園を飛び出した。「耐えられなかった。虐待だった」と話す。「自分もつらかったけど、他の子が苦しんでいることを外に知らせたかった」。数日間は知人のところへ身を寄せ、その後は児童相談所に保護された。


 暴行の疑いについて、少年は、寮の職員に首を絞められたり、プロレス技をかけられたりしたと証言。こうした行為に反論した場合などにも「寮指導」があったという。


 また、寮のトイレにトイレットペーパーが置かれず、大便のたびに許可を得てもらっていたという。少年は「もらえる紙がいつも短かった。職員からはぞうきんみたいに裏面も使えと言われ、精神的に苦痛だった」と話す。


 少年は今、別の施設で暮らしながら高校に通う。「今の暮らしは平穏です。でも、僕らに嫌がらせをしていた人がいなくなれば学園に戻りたい」と話した。


 少年の証言について県子ども家庭課は、「子どもから暴力の訴えはあったが、職員は否定しており、調査でも日時などの特定はできなかった」としている。